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好き≠恋(日文版)-第19部分

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 木の下にあるベンチへツバサが腰掛けた。ちょうど日陰になっていて、吹いてくる風はとても気持ちいい。健人もベンチに腰掛けて、背もたれに体を預ける。こうして、落ち着いて座るのはとても久しぶりのことだったように思う。リビングにいても、部屋に居ても、ずっと緊張して落ち着けなかった。ここに来てようやく落ち着けたことで、健人は大きく息を吐き出した。それと一緒に、もやもやと考えていたことまで、吐息と一緒に消えようとしていた。
「……この前は、ありがとう」
 自然とそんなことを口走ってしまい、健人も少し驚いた。ツバサはきょとんとした顔で健人を見てから、「何のことだ?」と尋ねる。先ほど、倒れかけた話をしたというのに、助けてくれたことは忘れてしまっているようだった。
「倒れかけたとき、助けてくれたから。飲み物ももらったし」
「あぁ、あれか。気にしなくていい。飲み物だって、部室から取ってきたやつだから、タダだし」
「……でも、部で使う奴をもらったんだ。さすがに……」
「あんなもん、何十本も置いてあるんだ。1本ぐらいパクったって、バレやしない。もう飲んだんだろ? 気にしたって仕方ない」
 はっきりと言われて、健人は黙った。確かにツバサの言うとおりだった。こうして、思ったことをズバズバと言ってくれるツバサは、話しやすいと思った。逆に歩は、考えていることを口に出さないから、何を思っているのか分からない。だから、知らない間に地雷を踏んでしまい、険悪になってしまうのだ。けれど、それは歩だけではない。健人も考えていることを話さないから、歩には気持ちが伝わっていなかった。
 それから、すれ摺いk生している。
「変なところを気にするんだな、お前は」
「……いや、礼だけは言いたかったんだ。助かったのは、事実だし」
 健人は顔を上げて、ツバサにそう言った。ツバサは真面目にそういう健人を少しの間見つめ、プッと噴出すように笑った。数秒間、声を上げて笑い、目に涙を浮かべながら健人を見た。
「見た目どおり、真面目だな」
 それがバカにされたと感じた健人は、ムッとする。助かったから礼を言っただけなのに、バカにまでされることはない。そんな表情を見せると、またツボにはまったようでツバサは笑い始めた。学校にいるときは、寝ているだけの姿しか見たことが無いので、こんなにも感情豊かだったとは知らなかった。
「悪い悪い。良い意味で言ったつもりなんだ。そんな風に礼を言われることは滅多にないから……」
 ふと見せた寂しそうな表情に、健人は目を見張った。そんな顔も一瞬にして消え、ツバサは空を仰ぐ。ん姢瑩eれて、白い肌が露になった。屋内競技をやっているせいか、肌はとても白い。透き通るような肌に見入っていると、「……あっついなぁ」と呟くような声が聞こえた。
「……え?」
「佐偅虾韦颏筏皮郡螭溃俊
 目を向けられ、健人は「買い物に行こうとしてたんだ」と素直に答える。苗字といえど、名前を呼ばれるのは初めてで少しドキッとした。
「買い物? こんな時間に?」
「……家にいても退屈だったから。夕飯の食材も足りなさそうだったし」
「あぁ、買い物って夕飯のか。てっきり、服とかそんなのを買いに行くのかと思ってた。って言うか、何でお前が夕飯の買い物とかに行くの?」
 ストレ趣蕟枻い堡恕⒔∪摔稀竵I親が旅行に行ってるんだ」と答えてしまう。なぜか、ツバサの前では、素直に言葉が出る。こうして座りながら話していることも、苦ではなかった。
「……へぇ、じゃぁ、今はあの煩いのと二人きりか?」
「そうだな」
 一瞬、ツバサから表情が消えたのを健人は見逃さなかった。すぐに健人から目を逸らし、顔を反対側に向ける。煩いのと言い、名前で呼ばないのを見ると、ツバサはあまり健人のことが好きではないようだ。出席番号順に座っていたとき、毎日と言うほど話しかけられ、寝ているのを邪魔されているのだ。嫌っていても仕方ないと思った。
「名前は……、なんて言うんだ?」
 いきなり問いかけられた言葉に、健人は反応できなかった。名前を尋ねられていることは分かっているが、まさか、自分の名前を聞かれているとは思わなかった。
「……え?」
「お前達、二人の名前」
「……俺が健人で、煩いのが歩」
「ちっさいほうが健人か。ん、覚えた」
 小さいと言われて反論しようと思ったが、こうもマイペ工坤确凑摛工霘荬馐Г护皮筏蓼ぁ⒔∪摔虾韦庋预铯氦衰磨啸丹蛞姢俊N锲啶蕙ぅ讴‘スだけれど、嫌味がなくて、思ったことをすぐ口に出してくれるから一緒に居て楽だった。
「俺のことはツバサでいい。俺もお前のこと、健人って呼ぶし」
「……は!?」
「なんか、健人と一緒にいると、落ち着く。煩くないし」
 そう言われて、少しだけ嬉しくなった。けれども、その言葉に喜びきれず、健人は俯いてしまった。誰かからこうして、一緒にいると落ち着くなんて言われたことは無かった。だから、喜ばしいけれど、それを言ってほしい相手はツバサではない。脳裏に、歩の顔がよぎった。
「健人!」
 遠くから名前を呼ぶ声がして、二人は一斉に振り向く。公園の入り口には歩が立っていて、早歩きでこちらに近づいてくる。その顔は少し怒っているようで、健人は目を逸らす。どうして、ここまで来たんだろうか。理由は分からない。この前と同じように遅いから気になって様子でも見に来たんだろうか。優しくしてくれればしてくれるほど、苦しくなっていくのが分かった。
「あれ、一緒に居たの林だったんだ」
「……俺がいたら、悪かったのかよ」
「いや?」
 歩はにこにこと笑いながら、目の前までやってくる。ちょうど、健人とツバサの間に立って、二人に目を向ける。黙ったまま、何も言わずに、数分が経過した。ジリジリと蝉の鳴き声だけが、この空間での音だった。
「え盲取ⅳⅳ盲欤俊·胜螭⑿澳Г筏浚俊
 気まずくなった歩が二人にそう言うが、健人もツバサも答えなかった。邪魔をしたわけではないが、なんとなく歩がいると気まずい。健人は歩を見上げてから、そっと目を逸らした。
「……あのさ」
 健人の隣にいたツバサが少し不機嫌そうに歩へ話しかける。先ほどよりも低くなった声音に、健人は驚いてツバサを見た。煩いと言っていただけあって、ツバサは歩のことが嫌いなんだろうか。
「お前ら、仲悪いの?」
 何気ない伲鼏枻坤盲郡韦ⅳ饯欷趣庖鈬恧筏皮饯螭胜长趣蚵劋い皮郡韦戏证椁胜ぁ¥堡欷伞ⅳ饯钨|問に対して二人は答えられなかった。仲が悪いとは言えないけれど、良いとも言えない。互いに微妙な関係であることは、分かっていたようだ。健人は気まずそうに、歩を見る。歩もまた健人と同じ顔をしていた。
「別に⒅賽櫎蠠oいよ。ね、健人?」
 ちょっとだけ間を置いてから返事をした歩に「う、うん」と健人も返事をする。それから歩は困ったように笑っていたが、ツバサはジッと見つめたまま、表情を変えなかった。
「へぇ。そうなんだ。あんまり、仲良い風には見えなかったけど」
 そう言うとツバサは立ち上がって、歩を少しだけ見つめると健人に目を向けた。
「次会うとしたら、学校だな。じゃあな」
 ツバサは健人にだけそう言い、歩には何も言わずに公園から立ち去ってしまった。あからさまな態度に、健人も歩も反応することが出来ず、健人は座ったままの状態でツバサが公園から出て行くのを見送っていた。ツバサの姿が見えなくなり、健人は恐る恐る歩に視線を移す。
「なんか、話してたの?」
「……え?」
 いきなりそんなことを聞かれて、健人は何を尋ねられているのか分からなかった。分からないと言った顔をしている健人に、歩は「だから、林と何か話してたの?って」と今度は詳細な話をした。
「いや、特には……」
 内容のある話をしていたわけではない。铡Щ工瑜Δ搜预Δ取iは「……俺には言えない話?」と皮肉げに言い、健人を戸惑わせた。どうしていいのか分からず、健人は歩を見上げたまま、何も言わなかった。
「……ごめん。ちょっと、俺、ムキになってたかも」
 不安げな健人の顔を見て、歩は困ったように笑った。そんな表情をさせたいわけではないのに、最終的に歩は困ったように笑う。それは自分を責めているからなんだろう。笑うことしかできず、不恰好な笑みになっている。健人はこれ以上、口を開くことはできなかった。
 健人が分からないと不安がっているのと同じように、歩も困っていた。追求するつもりは無かったのに、話してくれない健人にもどかしさを覚えた。それから何も考えずにあんなことを言ってしまい、健人を黙らせてしまった。目下に見える表情は、怒っているのか、それとも悲しんでいるのか、考えていることが分からなかった。
 しばしの間、沈黙が続く。
「ねぇ、健人」
 歩は困った表情のまま、健人を見つめている。その目は、どこか悲しんでいるようにも見えて、健人の胸が苦しくなる。
「一回、話し合ったほうがいいかもね。俺達」
 そう言った歩に、健人は頷いて立ち上がった。うだうだ考えていても仕方ないことは、互いに分かっていて、話し合わなければ解決しないのも分かっていた。それでも、互いの気持ちを知ってしまえば、ショックを受けるのは自分だと思って話し合うことを避けていたのだ。それから始まるすれ摺い稀ⅳ瑜辍⒍摔蜻hざけていく。
 話し合いで、二人の距離が縮むのかどうか、それはまだ分からない。
日差しは強い。ジリジリとあぶられているような錯覚に陥りながらも、健人は懸命に前へと進んだ。考えているだけで、眩暈がしそうだった。これから、話し合うと決めた。それに返事をしたまでは良いが、本当のことを言われるのが怖くて仕方なかった。
 歩に嫌われるのが怖い。
 そう思っていたけれど、これ以上、こんな曖昧な関係を続けて行く方が恐怖を感じる。一度、嫌いと言われたのだから、今回だって大丈夫だと服を握りしめた。こんな覚悟をしなければいけないほど、追い詰められているのが現状だった。
 会話も無く、二人はただ、家へと向かって歩いている。気温は日中の最高まで達しているせいか、歩いているだけで汗が流れてくる。まだ、公園の日陰に居た方が気持ち良かった。影も短く、照りつけている太陽は弱まることを知らない。ジ俯‘と蝉の鳴き声が、やたらと耳についた。
 あっという間に家に到着してしまい、健人は息を吐きだした。流れてくる汗を腕で拭って、靴を脱ぐ。歩は先にリビングへ行ってしまって、玄関には健人がいるだけだった。このまま、逃げてしまいたい。それでも、逃げ出す勇気すら暑さに奪われてしまった。
 玄関で靴を脱いで、家の中に入る。リビングに繋がるドアが、とても分厚く感じる。家と言うものは、家庭を守るシェルタ扦ⅳ辍⒓易澶违匹辚去戛‘だ。その中に足を踏み入れて良いのは、家族だけだ。入りづらさを感じると言うことは、その家族の一員で無いことを意味するのだろう。以前から感じていた、家の中の居づらさ。健人は家族から認められていないと思っていた。本当の家族は、母と義父と歩だけなのではと、勝手に決めつけていた。けれども、一人、居づらさを感じていただけで、本当に拒絶していたのは健人だったのではないだろうか。半端ものだと言われているように思いこんでしまい、健人自身が家族を受け入れていなかった。勝手に作られた新しい家族を、健人は拒んでいたのだ。
 その結果として、最初に、歩を嫌った。同い年だから、言いたいことを言える相手だった。義父も、健人に内緒で再婚した母にも、裏切りを感じていたけれど、育ててくれている恩があるから文句など言えなかった。態度にも出すことが出来なかった。けれど、歩は摺ΑQ饪帳盲皮い胜堡欷小⒂皮皮猡椁盲皮い毪铯堡扦猡胜ぁ¥郡坤瓮尤摔取⒁痪wだった。だから、感情を素直に出すことが出来たし、嫌うことだって簡単だった。歩がどう思うかなんて、健人の頭の中には一切無かった。歩を嫌っていると言うことは、家族を拒否しているのと同等で、健人は無意識のうちに歩を嫌うことで家族を認めていないと言い張っていたのだ。
 近寄ってほしくない。構ってほしくない。そう思うことで、自分のアイデンティティを確立していたのだ。所詮、嫌っていること自体が、自己満足と言うわけだったのだ。
 それなら、歩に嫌われても仕方ない。傲慢だと言われ、大嫌いと言われるのは当たり前だ。歩からしたら、そんな健人の考えは知ったことではないからだ。新しくできた兄弟に、歩は仲良くなろうと近づいてきてくれたのに、健人がそれを最初から拒否した。そんなことをしてしまえば、歩が良いように思わないのは分かりきっていることだ。それでも、歩は健人に優しくしてくれた。同情からかもしれないが、あの雨の日から、歩は変わってくれたのだ。
 それがどう言うことなのか、健人には分からない。分からないから、こうして悩んでいるのだった。
「……健人?」
 ドアノブを握ったまま、入ってこない健人に不安を覚えて歩はリビングの扉を開けた。不安げに見上げる健人を見つめて、歩は「どうしたの?」と尋ねる。今にも泣きそうな顔は、あの雷の日とダブり、胸が苦しくなった。
「……俺と、話し合うなんてイヤだった? 健人がイヤなら……」
「イヤなんかじゃない」
 心配そうな顔をして、健人のことばかり気にする歩に、健人はヒステリックに否定してしまった。健人は頭を振ってから、もう一度、歩を見上げる。歩の表情は変わらず、心配しているような悲しい目をしていた。
「俺は……、酷い奴なんだ」
 漏れるような声に、歩の眉間に皺が寄る。それを見た健人は、目を逸らしたくなったが逸らさずに歩を見上げ続ける。
「お前が前に言った通り、俺は自分が被害者だと思って、勝手に決めつけてた。母さんが再婚したこと、ど
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