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仮面城(日文版)-第4部分
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ふたりは間もなくきょう昼間、ぶきみな老婆が手をあらっていた、あのやぶかげの小道にさしかかったが、そのときだった。金田一耕助がとつぜん、ギョッとしたように立ちどまったのである。
「先生、ど、どうかしましたか?」
「シッ、だまって! あの音はなんだろう」
金田一耕助のことばに、文彦もギョッと耳をすましたが、するとそのとき聞こえてきたのは、なんともいえぬ異様な物音だった。
チャリン、チャリンと金属のすれあうような音、それにまじってガサガサと、雑草をかきわけるような物音が、林の奥から聞こえてくる。たしかにだれかが、林のなかを步いているのだ。しかし、あのチャリン、チャリンという物音はなんだろう。
金田一探偵と文彦は、すばやくかたわらの木立に身をかくすと、ひとみをこらして音のするほうを見ていたが、やがてアッという叫び声が、ふたりの口をついて出た。それもむりはなかった。ああ、なんということだろう。こずえにもれる月光を、全身にあびながら、林のなかを步いているのは、たしかにきょう文彦が、あの洋館の客間で見た、西洋のよろいではないか。
西洋のよろいはフラフラと、まるで|夢撸Р≌摺钉啶妞Δ婴绀Δ筏恪筏韦瑜Δ恕⒘证韦胜虿饯い皮い¥饯筏啤ⅳ饯我蛔悚搐趣恕ⅴ隶悭辚蟆ⅴ隶悭辚螭取⒔鹗簸韦栅欷ⅳσ簸工毪韦馈H恧洗氦卧鹿猡颏ⅳ婴瓢足y色にかがやき、そのうえに、木々のこずえのかげが、あやしいしま[#「しま」に傍点]もようをおどらせている。
あまりのことに、さすがの金田一探偵も、しばらくぼうぜんとしてこのありさまをながめていたが、やがてハッと気をとりなおすと、バラバラと林のなかにとびこんだ。
と、その物音に西洋のよろいは、ハッとこちらをふりかえったが、つぎの瞬間、
「キャ茫
それこそ、まるできぬをさくような悲鳴をあげると、クルリとむきをかえて、林の奥へ逃げだした。
「待て!」
金田一耕助ははかまのすそをさばいて、そのあとを追っかけていった。相手はなにしろ重いよろいを着ているのだから、すぐにも追いつきそうなものだが、それがそうはいかなかったのは、金田一探偵の服装のせいだった。
林のなかには雑草が一面にはえている。またあちこちに切り株があったり、背の低いカン木がしげっている。それらのものがはかまのすそにひっかかるので、なかなか思うように走れないのだ。
「先生、しっかりしてください。だいじょうぶですか」
「ちくしょう、このいまいましいはかま[#「はかま」に傍点]め!」
いまさら、そんなことをいってもはじまらない。
こうしてしばらく林のなかで、奇妙な鬼ごっこをしていたが、そのうちに、さすがの金田一耕助も、思わずアッと棒立ちになってしまうようなことが起こった。
たったいままで林のなかを、あちらこちらと逃げまわっていたあのよろいが、とつぜん、ふたりの目のまえから、消えてしまったのである。そうなのだ。それこそ草のなかに、のみこまれたように、あとかたもなく消えうせてしまったのだった。
秘密の抜け穴
「せ、先生、ど、どうしたんでしょう。あいつはどこへいっちまったんでしょう?」
「ふむ」
金田一探偵も文彦も、まるでキツネにつままれたような顔色である。
ああ、じぶんたちは夢を見ていたのであろうか。春の夜の、おぼろの月光にだまされて、ありもしないまぼろしを追っていたのだろうか。……文彦は林のなかを見まわしながら、ブルルッとからだをふるわせたが、そのとき金田一探偵が、
「とにかく、いってみよう。人間が煙みたいに消えてしまうはずはないからね」
雑草をかきわけて、さっきよろいが消えたところまで近づいていったが、すると、すぐに怪物の、消えたわけがわかった。そこには古井戸のような、ふかい穴があいているのだ。
「あ、先生、ここへ落ちたんですね」
「ふむ、こんなことだろうと思ったよ」
金田一耕助はたもとから懐中電燈をとりだすと、穴のなかを眨伽俊Qà韦栅丹纤磨岍‘トルくらい、底にはこんもりと雑草がもりあがっているが、怪物のすがたはどこにも見あたらない。
「せ、先生、これはいったいどうしたんでしょう。ここへ落ちたとして、あいつはそれから、どこへいってしまったんでしょう」
「待て待て、文彦くん、これを見たまえ」
金田一耕助は懐中電燈で、このから[#「から」に傍点]井戸の壁のいっぽうを照らしたが、見ればそこには一すじの、鉄ばしごがついているではないか。
「あ、先生、それじゃこの井戸は……」
「抜け穴なんだよ。大野老人もお嬢さんの香代子さんも、しじゅうだれかの見張りをうけて、ビクビクしていたといったね。それでこういう抜け穴をつくって、万一のときの用意にそなえておいたにちがいない」
「先生、それじゃこの井戸をおりていけば、あの洋館へいけるんですね」
「そうだろうと思う。さっきの怪物はそれを知っていてもぐりこんだのか、知らずに落っこちたのか知らないけれど、こうしてすがたが見えないところを見ると、抜け穴へもぐりこんだのにちがいない」
それを聞くと文彦は、なんともいえない強い好奇心と、はげしい冒険心にかりたてられた。ガタガタと武者ぶるいをしながら、
「先生、それじゃぼくたちもいってみましょう。この井戸のなかへもぐってみましょう」
「文彦くん、きみにそれだけの勇気があるかい」
「あります」
「抜け穴のなかに、どのような危険が待っているかわからないぜ」
「だいじょうぶです。ぼく、よく気をつけます」
「よし、それじゃいこう」
金田一耕助はみずから先に立って、鉄ばしごに足をかけた。文彦もそのあとにつづいた。井戸の底までたどりつくと、そこには雑草がこんもりともりあがっている。しかしそれはただの雑草ではなくて、タケであんだわくの上に、たくみに雑草をはさみこんであるのだった。
「文彦くん、わかったよ。これで井戸のふたをして、人目につかぬようにしてあったんだ」
「あっ、先生、ここに抜け穴の口があります」
「よし、それじゃぼくが先にいくから、きみはあとからついてきたまえ」
その横穴は高さが一メ去氚毪椁ぁⅳ趣胜扦狻ⅳ沥绀盲壬恧颏幛毪取⒘ⅳ盲撇饯堡毪椁い未螭丹扦ⅳ搿
金田一耕助は用心ぶかく、懐中電燈で足元を照らしながら、一步一步すすんでいく。文彦はきんちょうのために、全身にビッショリ汗をかきながら、そのあとからつづいていった。おりおり抜け穴の天じょうから、ポトリと冷たいしずくが落ちてきて、文彦をとびあがらせた。
「文彦くん、それにしてもあの林から、洋館まではどのくらいあるの?」
「はあ、だいたい三百メ去毪椁い坤人激い蓼工堡欷伞⒌坤亭颓盲皮い蓼工椤!本距離だと、百メ去毪椁い扦悉胜い扦筏绀Δ
「それじゃ、もうソロソロいきつきそうなものだが……あ、ここに鉄ばしごがついている」
どうやら、抜け穴の終点にきたらしい。さっきとおなじように縦穴がついていて、そこに一すじの鉄ばしごがかかっている。そして、穴の上から明るい光が……。
「文彦くん、気をつけたまえ。抜け穴の外になにが待ちかまえているかわからんからね」
「はい!」
金田一耕助がまず鉄ばしごに手をかけた。一步おくれて文彦もあとにつづく。と、そのときだった。上のほうから聞こえてきたのは、きぬをさくようなあやしい悲鳴。それにつづいてドタバタと、床をふみぬくようなはげしい足音、その足音にまじって聞こえるのは、チャリン、チャリンと金属のふれあう物音。……それこそ、あの西洋よろいの身動きをする音ではないか。
黄金と炭素
金田一耕助はそれを聞くと、サルのように鉄ばしごをのぼっていった。
縦穴を出ると、そこにはたたみが三畳しけるくらいの、せまい板の間になっていたが、壁のいっぽうが大きくひらいて、そこから隣のへやの光がパッと、さしこんでいるのだ。
と、見ればそのへやのなかでもみあう二つの影、ひとりはさっきの西洋よろいなのだが、もうひとりは|筋《きん》|骨《こつ》たくましい大男である。
大男はいましも西洋よろいをいすに押しつけ、縄でぐるぐるしばっているところだった。西洋よろいはもう抵抗する勇気もうせたか、ぐったりとして、相手のなすがままにまかせている。金田一耕助はそれを見ると、
「なにをする!」
叫ぶとともにへやのなかへおどりこんだが、この声に、ハッとふりかえった大男は、金田一耕助のすがたを見るとにわかにかたわらのテ芝毪紊悉摔ⅳ盲俊毳辚氓去毪椁い韦婴螭蚴证摔趣辍ⅳ悉盲筏趣肖辘送钉菠膜堡俊
びんは暖炉の角にあたって、木っぱみじんにくだけるとともに、なかからパッととび散ったのはなにやらえたいの知れぬし勰
金田一耕助はたくみにその下をかいくぐると、
「なにをする!」
ふたたび叫んで、手にした懐中電燈を相手にたたきつけた。
相手もしかし、たくみにそれをさけると、猛然として耕助におどりかかってきたが、いや、その力の強いこと。耕助探偵はたちまち床の上に押し倒され、おまけにぐいぐいのどをしめつけられ、いまにも気が遠くなりそうになったが、そのとき抜け穴からとびだしてきたのが文彦である。このありさまを見ると、ポケットにあった黄金の小箱を、とっさのつぶてとして、はっしとばかりに大男にぶっつけた。
おどろいたのは大男だった。ギョッとしたように金田一耕助からはなれると、こちらにむかって身がまえたが、そのとたん、文彦もおどろいたが、相手のおどろきはそれよりもっとひどかった。
「ア、ア、ア、ア、ア……」
ああ、それは口のきけない牛丸青年ではないか。牛丸青年はしばらく、文彦と金田一耕助を見くらべていたが、
「ア、ア、ア、ア、ア……」
ふたたび奇妙な叫びをあげると、だっと[#「だっと」に傍点]のごとくへやからとびだしていった。そして、そのまま、家の外へ逃げだしてしまったのだ。
「やれやれ、おかげで助かった。もう少しでしめ殺されるところだったよ。おや?」
床の上に起きなおった金田一耕助が、ふと目をとめたのは黄金の小箱である。
「文彦くん、いま投げつけたのはこれかい」
「はい」
「きみはどうしてこんなものを持っているの」
文彦が返事をためらっているのを、あやしむようにながめながら、
「こりゃ、たいしたものだね。本物の金だよ。おや、この箱にも|七《しっ》|宝《ぽう》で、トランプのダイヤのもようがちりばめてあるね。ダイヤのあざにダイヤのキング、そしてこの小箱にもダイヤのもよう[#「もよう」に傍点]……」
金田一耕助はふしぎそうにつぶやきながら、へやのなかを見まわして、
「文彦くん、このへやに見覚えがある?」
「あります。大野老人の客間なんです。そして、そこんとこに西洋のよろいが立っていたんです」
「アッ、西洋のよろいといえば……」
気がついてふりかえると、西洋よろいはいすになかばしばられたまま、ぐったりとしている。どうやら気を失っているようすである。
「おい、しっかりしろ!」
金田一耕助と文彦は、つかつかとそばへ近寄り、かぶとをぬがせてやったが、そのとたん、ふたりとも思わず床からとびあがった。なんと、よろいのなかにいる人物は、文彦とおなじ年ごろの少年ではないか。
「先生、こ、これは……」
「ふむ、こいつは意外だ。こいつがこんな子どもとは……とにかく、縄をといて、よろいをぬがせてやりたまえ」
ふたりは大急ぎで少年の縄をとき、よろいをぬがせてやったが、そのとたん、文彦はまたもや床からとびあがったのだった。
「ど、ど、どうした文彦くん」
「先生、こ、これを……」
文彦の指さしたのは、怪少年の右腕の内側だったが、なんとそこには文彦の、左腕にあるのとおなじ、ダイヤがたのあざが、うすモモ色にうかびあがっているではないか。
「ああ、ダイヤ……ここにもダイヤ……」
金田一耕助はくいいるように、その小さなあざをながめていたが、やがてハッと目をかがやかせると、暖炉のそばへ近寄って、一つまみの粉末をつまみあげた。それはさっき牛丸青年が投げつけた、びんのなかからとび散った粉末なのだ。
金田一耕助はその粉末を、くいいるように見つめていたが、やがて大きく息をはずませると、
「文彦くん、き、き、きみには、こ、これがなんだかわかるかい。こ、これは炭だよ。し、しかも、純粋な、なんのまざり気もない、炭素なんだよ」
金田一耕助は興奮にふるえる声でそういうと、まるでふかいふかいふちでものぞくような目の色をして、ジッと考えこんでしまった。
ふしぎな機械
「先生、この子はだれでしょう。どうしてよろいのなかにかくれていたんでしょう?」
「わからない。それはぼくにもわからない。とにかく、気を失っているようだから、そのソファ饲蓼护皮い啤荬膜韦虼膜长趣摔筏瑜Δ袱悚胜い
金田一耕助はおちついていた。いや、おちついているというよりも、なにかほかのことに、頭をなやましているらしいのだ。
「文彦くん、きみはこの家の地下室から、奇妙な音が聞こえてきたといったね。ひとつ、それを眨伽皮撙瑜Δ袱悚胜い
「先生、だいじょうぶでしょうか」
「だいじょうぶだよ。きみもきたまえ」
金田一耕助は怪少年のからだを、ソファ紊悉饲蓼护毪取⑽难澶趣趣猡摔丐浃虺訾俊¥饯欷摔筏皮狻⒗先摔湎愦婴悉嗓Δ筏郡韦坤恧Α<窑韦胜摔悉ⅳⅳ取㈦姛簸膜い皮い毪趣いΔ韦恕ⅳ嗓长摔馊擞挨弦姢à胜い韦扦ⅳ搿
「先生、この家のひとたちは、いったい、どこへいったんでしょう?」
「逃げだしたんだよ。ダイヤのキングにおどかされて、どこかへ逃げてしまったんだ」
ふたりは家のなかをさがしまわったが、さいごに階段のそばまでくると、金田一耕助がふと立ち
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